KAMMENNYI TSVETOKー棗猫の標本箱

"KAMMENNYI TSVETOK(カーミニツヴィートク)"は鉱物蒐集に関する個人的な覚え書きのBlogですFC2より引っ越しました。 サイト名は真の美しさを求め石の花を追い求める石工を描いたロシアの作家パーヴェル・バショーフの小説集の題名「石の花」のロシア語表記から採りました。 *当サイトの管理人は著作権を放棄しておりません、文章及び画像の無断転載はご遠慮下さい。

ニュージーランド旅行記4-テカポ~マウントクック

この日はNZに来て3日目、クライストチャーチを早朝に出発、テカポ湖畔にてトランピングを体験した後、南島最高峰のMt.Cook(アオラキ)のふもとを目指す。

クライストチャーチを発つ事2時間半くらいで、湖畔の街テカポに到着する。

この日は素晴らしい晴天で『長くたなびく雲の国』(マオリ語でAO-TEA-ROA、ただしこの言葉の意味は日照時間の長い国と解釈すべきとの説もある。)と呼ばれるNZ(ニュージーランドの略、長いので以後こう表記する)ならではの素晴らしい光景が広がっていた。


長くたなびく雲

長くたなびく雲


バスを降りると、山並を背に広がるテカポ湖の絶景と実に綺麗な湖の色が眼に飛び込んでくる、シーブルーカルセドニーやブルーオパールなどの宝石を連想させる様な鮮やなブルーグリーンなのだ。

この鮮やかな発色の原因は氷河によって削られた岩石の粉で天候に因ってはもっと白っぽく見える事も有るそうだ、地元の人々はその色を「ミルキーブルー」(テカポ湖だけがこの色かと思っていたが南島の湖は鮮やかさには差があるものの、大体この色調のものが多かった)と呼んでいるという。


湖畔には石造りの小さな教会「善き羊飼いの教会」(そのロマンティックなロケーションから最近では結婚式場として人気ではるばる日本からもカップルが訪れるそうだ。)が佇むように建っている、質素で何の飾りも無いこの教会は1935年開拓者たちの心の支えとして建立された。

教会内部に入ると祭壇奥に大きく開けられた窓から十字架を背にテカポ湖の美しい風景が望む事ができる。

ステンドグラス一つない簡素な教会だが、この風景がどの様な装飾よりも、雄弁に美しい天上の世界を連想させる絵画となっていた。


善き羊飼いの教会

善き羊飼いの教会


湖の十字架

教会の中からのテカポ湖の眺め


湖畔の素晴らしい風景を眺めながら昼食をとっていると、どこからか場違いなインド音楽が聞こえてくる。

音のする方に目をやると、インドの撮影隊が民族衣装を着けたカップルが湖をバックに踊るシーンを撮影している。

NZは近年映画のロケ地として大人気なのだ。

それにしても、あのシーンはどんな映画のどんな場面に使われているのだろう?


ハイキングのメンバーが揃ったので、マウントジョンの登山に出発。

実際そう高い山では無い(1031M)らしいが登りが急で結構辛い、

情けない事に私は7合目付近でリタイア。

寝不足と持病の喘息で思っていたよりも肺機能が落ちていたのが敗因、途中の休憩場で更に上に登っていくK達を待つ事にした。

ガイドの説明によるとマウントジョンの辺りはすでにNZ固有の植物は少なく殆どが帰化植物らしい「そのうちNZは生態系が変わってしまい、今とは違う姿になってしまうかもしれない」と言う、自然保護に熱心なNZでもそうなのかと深く考えさせられる。


無事下山してきたK達と合流し、バスに乗り込んでマウントクックへと向かう。


NZ南島の幹線道路は全て最大速度100Kまで出せる、障害物のない風景の中を高速で駆け抜ける事ができるので、車のCMの撮影が良く行われるそうだ。

高速で走っているにも関わらず余り速度を感じないのは、周囲が開けた野原ばかりで景色が動かない為、それゆえ運転手が眠くなってしまうのを防ぐ為か時折『眠くなったら車を留めてここで寝ろ。』などと書いた大きな看板が立っていた。

走っている車の80%は日本車、左側車線なのでそのまま使える上、日本で廃車の基準になる10,000K位ではNZではまだこれからの車とみなされるので中古車に人気が有るらしい。


路傍に咲き乱れる花や途中の湖の素晴らしい風景に見とれていると、彼方に見えていたマウントクック(アオラキ)が徐々にその威容を表してきた。

やがて、周囲の風景が氷河によって造られた荒々しい山肌に変わり、今夜の宿泊地ハーミテージホテルに到着した。

この日のマウントクックは快晴に恵まれ、頂上まで惜し気も無くその姿を現わしてくれた。

宿泊先のハーミテージの部屋からの景観は素晴らしいものだった、窓一杯にマウントクックと氷河が織り成す壮麗な光景が広がる、私もKもひたすら部屋からの文字どおり絵はがきの様な風景に見とれて過ごした。


マウント・クック

夕焼けのMt.cook


★星空ツアー

山々が一瞬茜色に輝き、長く輝いていた日がようやく隠れるころ、南天の星空を眺める星空ツアーに出発した。

会場である遊覧飛行機の飛行場に着くと、漸く暮れかけた空に既にいくつかの星が見える。

まずαとβのケンタウロス座の二つの星*1を目印に南十字星が確認できた、頭を巡らすと見なれた星座が奇妙な角度で天蓋に張り付いている、上下をさかさまにしたオリオン座だ。

南半球では北半球の星座が全て逆位置に見える、太陽は東から上がり北を通って西に沈むし月の満ち欠けの方向も逆。

私はここで長年憧れていた星を見る事が出来た、カノープスである。

南極老人と呼ばれるこの星は、北天で見える唯一の南天の星で、北天からは水平線ギリギリに上がり、大気の所為で赤みを帯び陽炎の様に揺らめく姿を老人に例えられる。

日本でも緯度的には見えるのだが、建物が林立する関東ではまず見る事の出来ない幻の星なのだ。

教えられて見たカノープスは天頂近くで白く毅然と輝き、老人と言ってもLOTRガンダルフ(Lord Of The Ringsに登場する魔法使いにして賢者)並みに元気そうだ。

夜が更けるに従って星の数は増えてくる、大の大人が寒空のした四方に設えた望遠鏡を大勢で代わる代わる覗く姿はかなりユーモラス、プレアデス星団(昂)や土星、南天の星団などを眺め、皆子供に返ってはしゃいでいた。

完全に日が落ちると微かに光る天の川が姿を現わし星空ツアーの終わりをつげた。

→NZ旅行記5へ

*1:この2星を南十字を探す為の目印、ポインターと呼ぶ