KAMMENNYI TSVETOKー棗猫の標本箱

"KAMMENNYI TSVETOK(カーミニツヴィートク)"は鉱物蒐集に関する個人的な覚え書きのBlogですFC2より引っ越しました。 サイト名は真の美しさを求め石の花を追い求める石工を描いたロシアの作家パーヴェル・バショーフの小説集の題名「石の花」のロシア語表記から採りました。 *当サイトの管理人は著作権を放棄しておりません、文章及び画像の無断転載はご遠慮下さい。

ニュージーランド旅行記5-Mt.Cook~クイーンズタウン

この日は大晦日、前日の山登りで懲りた私と同行のKは別行動、Kはマウントクック周辺のトレッキング、私は一人でスキープレーンによる氷河観光に出かける予定。


夜明けに天候を観ようと窓から覗くと氷河が朝焼けに染まって、素晴らしい眺めを見せてくれた。

この日もマウントクックは快晴、2日も続けて天候が良いのは珍しいらしい(この天候が悲劇をもたらした事を後で知る事になる)


朝焼けの山脈

朝焼けの氷河

前日のマウント・ジョンのトレッキングで自信の無くなった私は急きょ予定を変更し、スキープレーンのオプショナルツアーを申し込む事にした。

当日ホテルのカウンターに申し込みに行くと、天候によってぎりぎりまで飛ぶかどうか解らないと言う。

やきもきして待っていると、スキープレーンのパイロットから「今日は大丈夫」という連絡が入る、良かった!

迎えの車に乗って軽飛行機が並ぶ飛行場へと向かう。

スキープレーンは6人乗れば満員の小さなプロペラ機だ、足の部分にスキーの様なものがついていて雪面へのグラウンディングが可能になってる。


私が飛んだコースはタズマン渓谷の東側を上昇しタズマン川に沿って飛んだ後、タズマン氷河に着地する約40分のコース。(料金はNZ$280)

小さな飛行機に乗り込むと燃料の匂いが少々きつい、こんな小さな飛行機で大丈夫かな?などと心配している間にふわりと地上を飛び立った。

心配していた揺れも無く、飛行機は順調に氷河に削られた山肌の上を飛んで行く、夏場なので氷河によって鑿を当てられた赤茶色い山肌がくっきりと見え、その下には氷河の雪解け水を運ぶ川が細く蛇行しながら流れて行く。

やがて飛行機は真っ白な氷河の上にゆっくりと滑る様に着地した、プロペラが静止するとパイロットの誘導に従って氷河の上に降り立つ。



一面何も無い雪原だ、静かで荘厳で美しい光景が広がっている、しんと静まり返った白い世界に私達の声だけが響く。

それにしても眩しい、ただでも紫外線が強いNZだが雪のため照り返しが凄まじいのだサングラスを着けていても眼が痛くなる。

周囲を見渡すとNZ最高峰のマウント・クックと第2位マウント・タズマンの頂きが見え周囲の山々の威容に圧倒される、氷河の雪を観察するとヘミモルファイト(ブルーグリーンの鉱物、中国産が有名)の様なブルーグリーンの影が雪塊に見える、このブルーは氷河の氷雪特有のものらしい、この雪解け水がNZ特有のあの鮮やかな色の湖を生むのだろう。

パイロットに指差された方を見ると険しいTazman Glacierの上に小さなロッジが建てられていた、登山者の為のものだろうがあそこまで登るのかと思うと気が遠くなる。

氷河の山小屋

山上の小屋


パイロットが記念撮影をしてくれると言う、私は普段写真を撮られるのが嫌いだが折角なので撮ってもらう事にした、写真はその場でちょっとした台紙に挟まれ当日のパイロットのサイン付きで渡される。(料金はその場で20NZ$を払った)

やがて飛行機は氷河雪原を離れ、Uターンして飛行場に戻るべく飛び立った。

飛行機の窓から眺めるとマウント・クックの山頂が雲の傘を被っているのが見える、再び雄大な景色に眼を奪われているうちにマウント・クック飛行場が見えて来た。


ホテルに戻ってみるとトレッキング組は未だ戻っていない、既にチェックアウトを澄ませているのでロビーで山を眺めながらぼ~っと待つ事にした。

マウント・クックの山頂の雲が移り変わる様子を1時間くらい眺めて居ると、K達が戻って来た。

しきりに今日は楽だった、楽しかったあなたも参加すれば良かったのにと言う。

ちょっと残念だったが、そちらを選べば氷河観光は無理、限られた時間だから仕方が無い。


バスに乗り込み、途中幾つかの町を経由しながら次の宿泊地クイーンズタウンヘと向かう。

クイーンズタウンはワカティプ湖の湖畔に建てられたリゾートタウン。湖と四方を山に囲まれたその美しさが「女王にこそ相応しい」という事でこの呼び名がついたそうだ。

市街地から少し離れた宿泊先(宿泊先はメルキュール・リゾート)に着くと、連日のトランピングで疲れぎみのKを置いて市街地へと出た、各ホテルから市街地まではショッピングバスという有料の巡回バスが出ている。

この日は大晦日、クイーンズタウンの市街地は何だか浮き足立っている、カウントダウンに合わせてイベントをするらしく会場でバンドが練習していたり、ほろ酔い加減のKIWI達がそぞろ歩き、湖畔では深夜に花火を打ち上げるらしい。


気候を読み違えた為、洋服の着替えが底をついたのでTシャツを購入し、ホテルに戻って夕食をとる。

予約したホテル内のレストランへ入ると、見晴しの良い席に通された、ワカティプ湖とリマーカブルズ山脈の素晴らしい光景が一望出来る。

日が陰ってくると西の方から一条の光が湖上に差し掛かり、湖に迫り出したケルビンハイツと呼ばれる半島を照らし出す、その光の道の上を小舟がゆっくりと渡っていくのが見えた。

やがて半島全体が金色に輝き、背景のリマーカブルズ山脈が鮮やかな薔薇色に染まった、まるで幻想画を見るような素晴らしい光景に居合わせた人々も食事の手を休めて見入っていた。

「エルフの島みたいだ」とK、ふと私は前方の光景に見覚えがあるのに気がついてKに聞いた「ねぇ、あの辺り本当にLOTRのロケ地じゃない?」「ふうん」とK、LOTRの大ファンの彼女だが疲れている所為もあり反応が鈍い。

美味しい食事と素晴らしい自然のイベントに満足して、私達は明日のミルフォードサウンドに備えて早く眠る事にした。


クィーンズタウンの風景

クイーンズタウン


翌日、新聞で昨日マウント・クックで大雪崩があった事を知った、地元の有名登山家が4人も犠牲になったという。

連日の好天の為、氷河の雪が弛んだのが原因では無いかとのことだ、時刻を見ると丁度私達が山の自然の美しさに感激しながらホテルに戻った頃である。

美しいばかりでは無いNZの自然の厳しさを思い知らされる事となった。

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