内包物の正体は?
先日UPした内包物入りの内モンゴル蛍石の写真をTwitterで結晶美術館のDoubletさんに見て頂いたところ「歪んだ結晶の形を見ると菱鉄鉱の可能性がある」と教えて頂きました。
なるほど結晶の形を良く見ると等軸晶系の黄鉄鉱ほど整った立方体ではなく、ひしゃげた菱形の形で三方晶系に近いです。
蛍石の内包物という事で真っ先に黄鉄鉱が頭に浮かんでしまいましたが、思い込みを捨てて、先ずは結晶の形をしっかりと観察する事が大事でしたね。
この菱鉄鉱FeCO3(シデライト Siderite)は酸化鉄を多く含む鉄鉱石で古くから製鉄に利用されていました、鉱物名Sideriteはギリシア語の鉄(sídero)に因んだものです。
方解石CaCO3と良く似た結晶構造を持ち見た目も良く似ています、菱マンガン鉱(ロードクロサイト)とも非常に近い鉱物で菱鉄鉱に含まれる鉄(Fe)がマンガン(Mn)に置き換わると菱マンガンMnCO3になります。
もともとは黄みがかった透明感がある結晶なのですが、良く見かけるのは表面が風化して不透明な茶褐色になったもの、代表的な形は菱面体ですが他にも球状やカルサイトによく見られる葉片状の結晶もみられます。
上の写真ははネパール/ガネッシュヒマール産の水晶に共生している菱鉄鉱です。
水晶表面に見える菱形の茶褐色の結晶の他に水晶内部に入り込んでいる板状の結晶が見えます。
内包されている方は銀色に見えるので最初は別の物かと思ったのですが、持ち帰ってじっくり観察したら同じ物である事が分かりました。
この銀色はおそらく結晶の色ではなく水晶と菱鉄鉱の結晶の隙間の空気膜が光って銀色に見えるのではないかと思います。
内包物をアップにすると菱形の層が重なり合う結晶面の様子が良くわかります。