ティファニーストーン
Opalized Fluorite(Tiffany Jasper)/ Thomas range/Utah /USA
写真のぺンダントはOpalized Fluorite通称ティファニーストーン(ジャスパー)と呼ばれる石です。
このぺンダントはIMAGE2005で入手したものですが(格安でした^▽^)ティファニーストーンは以前からクリスタルショップの店頭でちらほらと見かけいて、そのパウル・クレーのキャンバスを思わせる優しい色彩に心惹かれていたものです。
ティファニーストーンはレッドベリルの産地として知られるアメリカのユタ州トーマス山脈周辺でのみ産出される、カルセドニー・フローライト・オパール・ロードナイトなどが様々な鉱物が混ざりあった混合石です(フローライトが混じっているため紫外線化で蛍光するという記述も見かけましたが自分では未だ確認していません。)
白いカルセドニー(一部オパール)のベースに紫のフローライト、ピンクのロードナイトの色彩が混ざりあい多様な模様を描き出すこの石の複雑な組成は、鉱山の岩石の空洞の中で鉱物の成分が豊富に含まれる地下水が火山の熱で循環し沈澱を繰り返す過程で生まれたものではないかと考えられています。
しかし何故この石に有名な宝石商と同じTiffanyという名前が付けられたのでしょうか?
この名前の由来には鉱山主の娘さんの名前から採ったなど諸説有るようですが、日独宝石研究所発行の「Gem information」誌(30.31号)のツーソンレポートの中に採掘者に直接聴いた話しとして、メトロポリタン美術館に所蔵されているTiffany一族出身の工芸家Louis Comfort Tiffanyの作品に良く似ていることから、所有者の許可を得て名づけたと云う話しが載っていました。
Louis Comfort Tiffany(ルイス・カムフォート・ティファニー(1848-1933年))はニュヨーク5番街の名門宝石店として有名なTiffany&Co,の創始者C.L.Tiffanyの長男として生まれました、恵まれた環境の中で独自の美意識を育んだLouisは家業の宝飾店を継がず美術の道へと進み、やがて室内装飾を手がける様になりました。
特に力を入れていたのがステンドグラスを中心とするガラスの工芸品です。
彼の工房はは従来の鉛ではなく銅のテープを周りに巻き繋ぎ合わせる手法を編み出しました、この事に因りより自然で細密なガラス表現が可能となり、その美術性ゆえにそれまで宗教色の強かったステンドグラスを一般の邸宅にも室内装飾として取り入れさせることに成功したのです。
また素材の開発に熱心だったTiffanyは様々なガラスを生み出しました、ファブリル・ガラスと呼ばれる虹彩ガラスが特に有名ですが、ステンドグラスの作品に多く使用されているのが乳白色のガラスに多様な色彩を溶かし込んだオパルセントグラスです。
さてここでティファニーストーンをじっくりと眺めてみましょう、乳白色の中に濃淡の紫が溶け込んでいる様な柄は確かにTiffanyが愛用したオパルセントグラスに似ています、間に走る黒い線はガラスを縁取る銅のテープの様にも見えます。
ティファニーストーンの採掘者が石と作品の類似性からこの名をつけたというのはとても納得のいく話だと思うのです。
この石はその美しさに魅せられた只一人の鉱夫によって採掘されているとの事で、残念な事に徐々にその産出量は減っている様です。
現在はTiffany&Co,への遠慮なのか現在この石の名称はTiffanyStoneの名前よりOpalized Fluoriteが一般的に使われています。
しかし、卓越した美意識と才能に恵まれながらも社交は苦手であったと伝えられるLouis Comfort Tiffanyが只一人の男の情熱によって地上に運ばれたこの美しい石に自分の名前が付けられている事を知ったなら、決して悪い顔はしないのではないかな…などとつい想像してしまうのです。
Louis Comfort Tiffany『風景』部分(モザイク画)
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