KAMMENNYI TSVETOKー棗猫の標本箱

"KAMMENNYI TSVETOK(カーミニツヴィートク)"は鉱物蒐集に関する個人的な覚え書きのBlogですFC2より引っ越しました。 サイト名は真の美しさを求め石の花を追い求める石工を描いたロシアの作家パーヴェル・バショーフの小説集の題名「石の花」のロシア語表記から採りました。 *当サイトの管理人は著作権を放棄しておりません、文章及び画像の無断転載はご遠慮下さい。

森の欠片

珪化木(青森)


珪化木(木化蛋白石)/青森県/日本

新宿ショーで見つけた石です。

メインの買い物は終わったし、後は小さな錦石のタンブルでも買おうかなと老舗の青弘苑さんを覗きに行くと、錦石のタンブルは売っていたのですが何故かどれも目玉のシールが貼られて「錦蛙」なるものに変身していて…(笑)

この目玉外せるかしらと思案しながら石が陳列された棚を眺めていてふと目が止ったのが写真の石。

「それは小っせえけど良いもんだよぉ、化石が中に入っとる」とご店主。

「珪化木ですか?」「そ、珪化木、今はながながそんなに良い物は採れねぇのよ」朴訥としたお国言葉で、この石の来歴をお話をして下さるのですが関東の人間の耳にはところどころ聞き取れないのが残念です。

この石、一見地味だけど年輪がくっきりと出ていますし何よりも持った感触が良い、何とも言えない不思議な味わいがあります。

津軽の錦石は特定の鉱物や岩石を指す物ではなく、この地方で取れるジャスパーや瑪瑙・玉随など磨くと美麗な模様と艶を示す石の総称です、模様毎に細かい分類がなされていますがこの石の様な珪化木も含まれ錦珪化木と呼ばれています。

「産地は?」とお訊きすると「あれと同じだよ」と張り紙をさすので見ると「白神山地」あの周辺の川か湖で採れたものなのでしょうか。

いずれにせよ古代の津軽地方の森の一部がこうして手元にあると思うと浪漫を感じますよね。

珪化木は青森以外でも東北の各地で産出します、有名な岩手の作家宮沢賢治は岩手の江刺郡岩谷堂で採れた珪化木(木化蛋白石)を印材として東京の宝石店で売り出す事を考えていたそうです*

残念ながらサンプルは送ったものの素材として適さないと判断されたのか、その計画は頓挫してしまった様です。「石っこ賢さん」と言われた宮沢賢治らしいエピソードだと思います。

*鈴木健二著「宮沢賢治文学における地学的想像力(1)(2)より